2021年ショパンコンクールに感動して。。
先日、日本人の快挙が大きなニュースとなったショパンコンクール、5年に一度しか行われない、ピアノのオリンピック的存在、世界で最も権威のあるこのピアノコンクールがショパンの祖国ポーランド、ワルシャワより予備予選から全て生配信されました。
それはそれは、素晴らしい感動の連続でした。
今年も終わりに近づく中、とても心に残ったこのことを書き留めておきたい、そしてクラシック音楽について初心者の方にも、ぜひこの感動を知っていただけたらと思い、このブログに書くことにしました。興味を持って頂けましたら嬉しいです。
以下お話を進めていきます。
課題曲はショパンの作品のみから課されます。
コンテスタントは30歳までという年齢制限があります。
主なショパンの作品を上げてみます。
ショパンの作品とは、ワルツ19曲(子犬のワルツなど含む)、ノクターン21曲(音楽に詳しくない方もきっとご存知な、作品9-2を含む甘いメロディの宝庫)、マズルカ58曲(ショパンの故郷ポーランドの民族舞踏をもとに着想したと考えられる曲)、バラード4曲(バラード1番は羽生結弦選手がオリンピックのショートプログラムで使用)、スケルツォ4曲、ソナタ3曲、ポロネーズ16曲(英雄ポロネーズ他)、アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ、幻想曲、舟歌、エチュード27曲(別れの曲、革命、他)、24のプレリュード(雨だれ、他)、そしてオーケストラと演奏するコンチェルト2曲、
39歳で亡くなったショパン、短い生涯の中でここに書いた曲だけでも、全て足すと178曲。
書き出してみると、天才とはいえ、これだけの曲数を書いたとは、、あらためて凄いことだなぁ、と思いました。どれも心に残る美しい曲です。
コンテスタントはこの中から課題に沿って、数曲を組み合わせ、自分を最大に表現できるプログラムを練ります。
2021年7月 書類、音源審査により通過した164人による、予備予選
課題 指定のエチュードより2曲、指定のノクターン又はエチュードより1曲、指定のマズルカより2曲
指定のコンクールで上位2位までに入った入賞者を含め、87名が通過、内日本人は14名の通過、浜松国際ピアノコンクールで2位に入った牛田智大さんは予備予選免除でした。
ここからは素晴らしい名演の数々の中から、心に残った日本勢の演奏を載せていこうと思います。
どの方も日本国内で、すでに活躍されているピアニストです。
2021年10月 本大会開催
1次予選
エチュードより2曲、指定のノクターン、エチュードより1曲、バラード、スケルツォ、幻想曲、舟歌より1曲
1次予選より、牛田智大さんの演奏です。
美しいノクターンに始まり、華やかなエチュード、深い解釈、次から次から音楽が溢れてくる幻想曲、素晴らしかった、感動しました。
牛田さんのが演奏前に寄せたTwitterの投稿より
「フランスの作曲家ベルリオーズの代表作のひとつにパリ七月革命記念式典のために作曲された「葬送と勝利の大交響曲」があります。フランス国民を称え、犠牲者を弔う意味をこめて作曲されました。今日演奏する「幻想曲」はショパンがベルリオーズの構想を祖国ポーランドに置き換えて描いたものです。ご存じの通りワルシャワ蜂起はロシア軍に圧倒され失敗に終わりました。国家消滅の危機にあるワルシャワ、自身が暮らす革命を成功させたパリ、その現実を見なければならないときの空虚で絶望的な感情が「幻想」というタイトルに繋がったのではないかと考えます。今日の本番では暖かく、穏やかなワルシャワが徐々に悲しみに染まり、多くの犠牲と深い絶望を経て再び希望を見出すまでの変遍を描きます。」
ノクターン作品27ー2、エチュード作品10-10、10-12「革命」、「幻想曲」
2次予選進出45名、内日本人8名
沢田蒼梧 進藤実優 反田恭平 角野隼斗 牛田智大 古海行子 小林愛実 京増修史
2次予選
課題
バラード、スケルツォ、幻想曲、舟歌、幻想ポロネーズより1曲
ポロネーズより1曲、他演奏時間が30分~40分のプログラムを組む。
2次予選より角野隼人さんの演奏です。https://youtu.be/uuhElaEJbQA
角野さんはクラシックピアニストとして活躍されていましたが、数年前より かてぃん としてYouTubeでも活躍。
数年前ユーチューブを初めて見た時、なんて才能のある人なのだろう、と注目していましたが、あれよあれよという間に有名に。
かてぃんチャンネル https://youtu.be/L2f6Mi7I5lY
2次予選より 沢田蒼梧さんの演奏です。https://youtu.be/Co43ouXa6ro
沢田さんは医大生でピアニスト。
学業とピアノの両立についてお話されたとても興味深い記事です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7fa9dc598271d73e2720caa7385be2b803d75b04
3次予選進出 セミファイナリスト23名、内日本人は5名の通過
進藤実優 反田恭平 角野隼斗 古海行子 小林愛実
3次予選
課題
ソナタ2番、3番、24のプレリュード、マズルカ より演奏時間が45分~55分のプログラムを組む。
3次予選より、進藤実優さんの演奏です。ソナタ3番、素晴らしい!もう釘付けです、、
3次予選より、小林愛美さんの演奏です。
小林さんの目にスイッチが入った瞬間から心を持っていかれました。物凄い集中力、24のプレリュード、今回のコンクールの中でも最も素晴らしい名演だったと思います。
ファイナル進出 ファイナリスト12名、内日本人は反田恭平さん、小林愛実さんの2名でした。
ファイナル
課題 コンチェルト1番又2番
(コンチェルトとは独奏楽器が中心となり、オーケストラと共演するものです。)
ファイナルの反田恭平さんの演奏です。https://youtu.be/3bMF5wS7Mr4
反田さんは最終順位、第2位に入りました。
日本人としては51年ぶりの最高位タイ2位という快挙です。
反田さんは体格を作るためにボクシングジムにも通ったというエピソードがありましたが、今回このコンクールの物凄さを見ていて、これも納得です。ファイナルでコンチェルトを弾くのが夢だった、というコメント、画面を通して見ているだけでも感動的。夢のような時間でした。
最終順位
1位 ブルース・リウ (カナダ)
2位 反田恭平
アレクサンデル・ガジョヴ(イタリア・スロベニア)
3位 マルティン・ガルシア・ガルシア(スペイン)
4位 小林愛実
ヤクブ・クシュリク(ポーランド)
どの方も素晴らしすぎる演奏、肉体と精神をぎりぎりまで込めた、気迫のこもった演奏は、通常のコンサートでは、なかなか聴くことのできないものでした。連日、配信ですが生で聴けたことは貴重な経験でした。
予選から本選を通して、技術を越えた、技術を持っているこの方々の演奏について、これが順位のつくものなのか、と考えさせられました。
それが解釈というならば、ショパン像をどのように考えるか、ということになります。
一説によると、今回のショパンコンクールは、幸せのショパン を演奏した方々が優位だった、という話もあります。
私もそのように思いました。
人間にはいくつもの側面があります。その中から、今回は悲しみの中から得られる美しさを表現した 悲しみのショパン ではなく、幸せのショパンが評価されたように思うのは、今のコロナ禍という時代に、皆が幸せを願うことも関係があったのかもしれない、そう思うところもあります。
いずれにしても、その時代時代に合わせて、良い意味で流され、動いて行かなければならないのだろう、と思うところです。
ぶらあぼ より、審査員ピオトル・パレチ二の貴重なインタビュー記事です。https://ebravo.jp/archives/106452
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